同じ世界を目指す企業として、 WHILLのモビリティ開発を加速させていきたい

軸受(ベアリング)の開発・製造を1916年に日本で初めて成功させた日本精工株式会社(以下、NSK)。以来、ベアリングをはじめとして自動車部品や精機製品といったさまざまな機械要素部品を生み出し、100年にわたってグローバルに産業の発展と環境保全に貢献しています。

NSKはWHILLの企業方針に賛同し、出資することでWHILLを支援しています。これによりNSKの要素部品技術やメカトロ技術と、WHILLのモビリティ開発技術を融合し、パーソナルモビリティの創出と普及に向けて、連携を図っていきます。その第一歩として、NSKはWHILLのパーソナルモビリティの特長である、軽快な動きを支えるオムニホイールに、信頼性が高くスムーズに回転するベアリングを供給しました。どのような経緯で出資や部品供給に至ったのか、NSKの中村様にお聞きしました。

中村 剛 様
日本精工株式会社 コーポレート経営本部
新事業推進室

内藤さんの志に一気に惚れてしまいました

NSKは、世界有数のベアリングメーカーとして培ってきた自社の技術・製品を、異業種・異分野が持つ独創的な技術やアイデアなどと組み合わせる「オープンイノベーション」という取り組みによって、新たなビジネスのシーズ(種)を探索してきました。この活動の中で、今後10年間に成長すると期待されるベンチャー企業として、WHILLを紹介いただきました。WHILLオフィスへの最初の訪問は2016年11月で、内藤さん(WHILL CDOの内藤 淳平)とお話ししました。驚きましたね。メーカーの方にお会いすることはよくあるのですが、「こんなに志の高い人がいるんだ」と思いました。「100m先のコンビニに行くのをあきらめる」という1人の車いすユーザーの言葉を起点に始められたこと、モビリティを必要とする人々に対し、スマートでその人らしい移動手段を提供しようとすることに、個人としても感激し、一気に内藤さんのファンになってしまいました。この人と一緒に仕事をしたいと思いましたね。

NSKにとって初めてのベンチャーとの連携

会社としても、「すべての人の移動を楽しくスマートにする」というWHILLの掲げるミッションは、「MOTION&CONTROL™を通じ、円滑で安全な社会に貢献する」というNSKの企業理念に通ずるものがありました。ともに共通点のあるビジョンを持っているという点で、NSKから出資を提案させていただきました。NSKにとって、自動車向けの既存事業ではカバーできない歩道領域にアプローチしているWHILLと連携していくことは、NSKの理念を実現する大きな一歩であると感じたからです。

出資をきっかけとして、NSKが供給したベアリングは、オムニホイールや分解機構などにModel C 1台あたり100個以上使用されています。ベアリング界においてNSKのマークは「高品質の証」だと自負しています。スムーズな動きを支えるために、信頼性のある製品を供給するのがベアリングメーカーとしての使命です。また、ただ部品を納めるのではなく、技術的なコンサルティングも含めWHILLのパーソナルモビリティの開発・生産を支援しています。

部品供給という枠を超えてより親密な関係に

NSK初の試みであるのですが、人材交流プログラムとしてNSKからエンジニアが出向しています。WHILLの強みは、アイデアをどんどん出していける人たちが、取り組んだことのないことを着実に実行していくところだと感じています。これを参考にアイデアを事業にするプロジェクトのリーダーを育成することがこのプログラムの目的の一つです。短期間でゼロから立ち上げて世に出していく過程をNSKにも取り入れていきたいと考えています。

WHILLがModel Aを成功させた中で培った流儀を吸収してきてくれることを期待しています。

WHILLは今後もさまざまなモビリティを世に出されていくと思います。WHILLの5周年イベントに参加させていただいたのですが、集まっているユーザーさんが、WHILLが生み出したモビリティに乗っていることを嬉しそうに語る場面が印象的でした。これからもモビリティに対するこだわりを持って、ユーザーのニーズの実現にチャレンジしていくことを期待しています。オムニホイールはもちろん、機体の改善やアクセサリーの開発でも、我々が持つ技術でバックアップしていきたいです。WHILLのモビリティにNSKの部品を使っていただいた方が、我々も技術的に鍛えられます。WHILLの場合、オムニホイールというあまりない機構での使用である上、屋外や屋内など走行環境も多様になりますし、人が乗るという点でより高度な安全性と信頼性を必要とされます。連携を通じて、お互いに新しい市場の創造と発展に貢献していきたいですね。

人材交流プログラムでWHILLに出向しているNSK近藤さんと。