古くから人は、ものを運ぶため、あるいは移動するためのさまざまな手段を発明してきました。どの時代でも、移動してその先にある情報を入手することはとても重要だったのです。それは移動に障害を感じる人でも同じこと。そんな人のための移動手段のひとつである車椅子には、古い歴史があるのです。
車椅子の歴史を紐解くことで、障害のある人々がどのように移動手段を獲得していったのか、これから先の未来の車椅子はどのようなものに進化していくのかを探っていきたいと思います。
世界で最初の車椅子とは?
ご存知の通り車椅子は、椅子に車輪がついたものです。
椅子の起源は、およそ紀元前3000年のエジプトといわれ、車輪に関しては、古代メソポタミア文明において既に存在し、紀元前5000年にまでさかのぼるといわれています。
人がこれらを組み合わせて利用しだしたのはいつ頃で、歴史的記録にはどのようなものが残っているのでしょうか。
諸葛孔明も乗った車椅子 木牛流馬
三国志の中で、諸葛孔明が「木牛流馬 」という運搬車を開発したと記されています。
手押し一輪車のような形で、蜀と魏の戦いである第二次北伐戦 の撤退をきっかけに、食糧の運搬量を増やすことが目的だったようです。
実際の詳しい仕組みは明らかになってはいませんが、現代の中国の職人たちが木牛流馬を再現しているところを見ると、物資に加え、人も乗せて運ぶことができる巧みな仕組みだったのではと想像できます。
絵画「若返りの泉」にも車椅子が登場
また、16世紀のドイツ画家ルーカス・クラナッハの作品「若返りの泉」(1546) にも、手押し一輪車に障害者を乗せて運ぶ風景が描かれています。
画面左側から、年老いた女性たちが次々に若返りの泉に入り、若さと晴れやかさを取り戻し、画面右側では、泉の脇で若い男性たちと嬉しそうに戯れるという、人間の根源的欲求を表現したような興味深い作品ですが、この時代では、資材運搬に使われていたと思われる一輪車に、人も乗せて使用していた歴史が伺えます。
スペイン フェリペ二世の車椅子
16世紀後半にスペインを統治した王、フェリペ二世が、手押し式の車椅子に乗っていたという記録 が残されており、痛風のために歩行が困難であったことから利用していたとされています。椅子の足先に小さな車輪がついていますが、前輪は方向が固定されているため、小回りは効かなかったのではないかと推察されます。
現代の介助型に似ており、リクライニング機能などリラックス目的で作られたと考えられ 、自走には向かなかったようです。
自走式の発明 ステファン・ファルファの3輪車椅子
17世紀、ステファン・ファルファ(ステファン・ファーフラー) という人物が3輪の車椅子を開発したと言われいています。
後輪に大型車輪2つと、前輪はギア付きの車輪をひとつ使用し、前輪をクランク(往復運動を回転運動に、またはその逆に変える。手回しのハンドルにも使われている機械要素。)で駆動して自走できるもの でした。キャスターがまだ開発されていなかったので、この時代以降、しばらくは、4輪よりも3輪のほうが自走用として操作性が良く、普及していたようです。
現在の形に E&J社の4輪ボックスタイプ車椅子
19世紀にかけて少しずつ発展してきた車椅子ですが、南北戦争の負傷者への需要を機に、産業化に加速をかけました。20世紀にはアメリカの車椅子メーカー E&J(Everest & Jennings)社の4輪ボックスタイプが主流 となりました。今も良く見る車椅子と変わらないデザインで、大型の後輪で駆動し、前輪には小型のキャスター がついています。椅子を布張りにしたことと、椅子と走行部分が一体化されたことで軽量化され、X型のフレームによって折りたたみが可能に なったものもあります。
1979年E&J社の独占解除契機に各社から発売される
当初E&Jは市場を独占していましたが、独占することに専念していた結果、方々から不満を買い、さらには司法省より反トラスト法違反で告訴を受けました。この1940年代から70年代まで、30年以上にわたって、車椅子の技術やユーザビリティの進化は停滞しました。この独占期間が終わってからは、スポーツタイプの先駆けとなる「クアドラ」という車椅子が誕生するなど、各社から続々と新たなタイプが発売され、素材やデザインが進化していく時代へとなります。
日本で最初の車椅子は 鎌倉時代?
(岩佐又兵衛 「小栗判官絵巻」)
日本において最初の車輪を使用した乗り物は、鎌倉時代の様子を描いた「一遍上人絵伝」の「土車」だろうといわれています。元々は、工事場で土を運ぶために使用されていたと考えられ、それを人の移動にも利用していたようです。その後も様々な文学、絵画にこの土車が登場し、長い間親しまれてきました。
日本史上第一号車椅子は「廻転自在車」?
人力車メーカーが製作したのではといわれている、木製の「廻転自在車 」が日本で最も古い車椅子のようです。しかしながら、日本における車椅子の歴史は資料がほとんどなく、現在も諸説があります。
今の車椅子に繋がる最初のものは1940年に誕生した「箱根式車椅子」と呼ばれ、北島藤次郎商店によって製作されました。木製のシートフレームと金属製のベースフレームからなり、まだハンドリムがついておらず、使用者は車輪を直に掴むなどして操作していました。当時はまだ富裕層のためのもの で、一般への普及はこの後となります。
北島式手動三輪車から、第一回 東京パラリンピックを契機に
日清戦争から第二次世界大戦にかけて、日本は多くの負傷者を生みました。そんな状況下、脊髄損傷者の利用という需要が増え、車椅子が普及。身体障害者福祉法が制定されるなど、一般の障害者への保障が整い、補装具の給付制度が始まりました。
この際、車椅子として指定されたものは、箱根式に似た室内用と、北島式手動三輪車などの2種類でした。手動三輪車は大きさも前後に大きく、黒ペンキ塗りのデザイン。1960年にE&J社の標準型車椅子が日本に伝わったとき、人々はその近代的なデザインに魅力を感じたことでしょう。
その後、1964年の第一回 東京パラリンピックで、先進国の選手らが当時最新式の車椅子を使用していたこを契機に、日本でも標準型の車椅子の生産が本格的に開始となります。
電動車椅子の歴史は?
そして時代が進み、電動車椅子が登場。自走ではなく電気の力で動く電動車椅子は、まずは単純に電動で動くものから、ユーザーが使い易い機能が続々と進化していきました。
1968年の八重洲リハビリから国産初の電動車椅子発売
日本における最初の電動車椅子は、八重洲リハビリ株式会社が製作したものとされ、標準型車椅子の後輪にモーターが付いたタイプでした。まだシートをユーザーに合わせて調整できる機能は少なく、自動で移動するということに重点がおかれたデザインです。
その後、通産省工業技術院が1976年に重度障害者用にカスタマイズできるタイプを開発。1973年から電動車椅子開発を始めた鈴木自動車工業(現スズキ)が、「モジュール電動車椅子スズキモーターチェアMC-10」(1979年)を発売しました。現在でも町でよく見かける一般的な形状です。そして、1980年頃になると、より重い障害を持つ方が使用できる高機能なものが続々と開発され、車椅子業界の発展に貢献しました。
ハンドル型電動車椅子 スズキセニアカー 利用者の対象が広がる
1985年8、国内初ハンドル形電動車椅子 「スズキセニアカー」が発売されました。この「スズキセニアカー」は、一見するとスクーターやバイクのようですが、免許なしで乗ることができる、れっきとした電動車椅子なのです。実際、皆さんも街でお年寄りがお散歩やちょっとしたおでかけに電動のカートを利用されているのを、見かけたことがあるのではないでしょうか。
パーソナルモビリティとしてスタイリッシュなデザインへ
さらに近年では、「パーソナルモビリティ」(一人乗りの乗り物)という、車でもなく歩行者でもない、新しい概念の乗り物が誕生しています。自転車などの既存の乗り物と、歩行の間の選択肢を提供するのがこのパーソナルモビリティで、概念自体は近年誕生したものですが、皆さんがよくご存知の車椅子こそ、このパーソナルモビリティの先駆けといえるのではないでしょうか。
そして、これまでは障害者が利用するイメージの車椅子から、便利だから誰もが利用するといった、イメージの幅を広げた乗り物を目指し、2014年9月スタイリッシュなデザインの電動車椅子「WHILL Model A」が誕生しました。
電動車椅子「WHILL Model A」 誕生秘話 動画
車椅子のソノサキ
「移動する」という目的のため、そして「どのような人でも、少しでもリラックスして快適に移動することができるように」と進化を遂げてきた車椅子。さらに今後の車椅子はどのように発展していくのでしょうか。
素材の軽量化やモーター、バッテリーなどの性能向上
自走車椅子は、新素材や異型パイプによって軽量化を追求すると共に、安全面やユーザーへの適合性も発展し続けています。
また、電動車椅子の飛躍も目覚ましいものです。モーターやバッテリーの性能向上により一回の充電で走行できる距離が伸び、また、制御技術の向上により走行環境に合わせて走行を補正できるタイプが登場するようになりました。
そして、プロダクトデザイナーによる新しいデザインの車椅子が提案され、デザイン賞を受賞する車椅子が目立つようになってきたのも見逃せないところです。車椅子本来の機能に加えて、車椅子がデザイナーの作品の対象として位置付けられ始めたといえるでしょう。
やがて、自動運転の未来へ
現在、電動車椅子の自動運転に関する様々な研究開発が行われています。もし、これが実現すれば、重度の障害者でも安全に移動を楽しむことができるようになるかもしれません。日立では、高齢者が自分で歩くことをサポートする車椅子の研究が進んでいます。一緒に散歩をしながら会話ができ、好みのルート案内などもしてくれる。疲れてしまったら、帰りは自動で送り届けてくれるといった、パートナーのような存在です。
移動手段というものは、ただ移動するというだけではなく、移動した先での目的まで気にとめる必要があります。そこでは「誰かに会いたい」 「おいしいものを食べたい」 「景色をみたい」 「空気を感じたい」 などの、その場所でしか得ることができない体験がたくさんあるでしょう。移動した先で、その人にとって“最高の体験”ができることこそ重要です。その目的を果たすための手段のひとつが、車椅子となる未来も訪れるのではないでしょうか。
ウィルの考える、車椅子の未来
こうして多くの企業がよりよいものを求めて新しい車椅子を作り出してきた歴史と、今車椅子がどのように発展しようとしているのかを見てきましたが、近年、これまでの概念を超える車椅子を目指して誕生したウィルの、最先端の技術と近未来的な新しいデザインに、世界から注目が集まっています。ウィルは車椅子の発展と共に今後どのように進化していくのでしょうか。
利用者の行動範囲の拡大
全ての人にとって、「これがなければできるのに」と諦めていた行動を後押しするような存在であり、そのネガティブがどんな要因であれウィルによって行動の範囲が広がり、新たな楽しみや幸せを見つけるきっかけになっていきたい、それがウィルの願いです。
服を着るように身に付けたくなるスタイリッシュな乗り物であることで、外出をワクワクするものにしたり、自動運転などの最新の技術によって多くの方にご利用いただけたり、外出先での万が一の事故やケガの補償するサービス(WHILL Smart Care )で、ご利用者の不安を最小限にすることなどを目指しています。
メガネのように当たり前に 更にその先を目指して
「昭和の時代、特に子供たちの中では、メガネをかけているとからかわれるような場面がありましたよね。けれど今では、伊達メガネのようにお洒落だからと必要のない人もかけるようになり、ネガティブがポジティブに 変化してきました。
更に近年ではグーグルグラスのように、もはやメガネという機能を超えた存在に進化しています。ウィルの考える未来も同じように、車椅子が持つネガティブな印象がポジティブに変化し、車椅子を使うことが“あたり前”と思える世界を創造すること。更にその先には、「便利だから誰もが使う」という、これまでの車椅子を超えた存在を目指したいと考えます。(WHILL(ウィル)株式会社 CEO杉江理)」
福祉用具としての最新の機能と安全性を追求していきながら、「どのような人でも生活を楽しめるように」心が前向きになる存在でもありたい。新たな車椅子によって誰もが笑顔になる、そんな車椅子に進化させていきます。
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