スポーツ観戦や、自身で体を動かしたいと思っても、施設のバリアフリー状況や、どんな施設が利用できるかわからず、なんとなく出かけるのをやめてしまう、ということはありませんか?スポーツ施設のバリアフリーに関するあれこれをご紹介します。
昨今の健康志向によりスポーツを楽しむ人が増えていますが、障害者もスポーツが楽しめるよう、さまざまなところでバリアフリー対策が取られています。
今回は、スポーツ施設のバリアフリー対策について、「スポーツを観戦する場合」と、「スポーツを自分で楽しむ場合」に分けてまとめてみました。たまには家の外に出てスポーツを楽しみ、リフレッシュしてみませんか?
障害者に人気のスポーツ観戦は?施設のバリアフリー状況は?
障害児・者のスポーツライフに関して、スポーツ庁が委託した「障害者のスポーツ参加促進に関する調査研究 」によると、過去1年間のスポーツの直接観戦で多いのは、プロ野球、高校野球、Jリーグなどとなっています。
車椅子利用者がスポーツ観戦をする場合、車椅子席はあるのか? 多目的トイレはあるのか? 駐車場は?そもそも観戦できるの? などいろいろ気になる点があります。
スポーツ観戦ができる施設はバリアフリーが進んでいるようですが、それぞれの施設では具体的にどのように設備が整えられているのでしょうか。
特に人気があるスポーツの、主なスタジアムを取り上げて、それぞれのバリアフリー事情についてご紹介します。
参照:『地域における障害者スポーツ普及促進事業(障害者のスポーツ参加促進に関する調査研究) 』
やっぱり野球が大好きだ!野球観戦
東京ドームをはじめとしたプロ野球の観戦を楽しめる施設には、車椅子席が用意されています。ただ席数は少なめなので人気カードの試合はチケット入手が難しい場合や、施設によっては1人で移動するのには難しい傾斜があるところ、駅から施設までの道が混雑して移動に不便なところも。また全エリアにそれぞれ席がある野球場と、特定のエリアのみに席を設けている野球場もあります。
観戦をする前にそれぞれの施設の設備・周辺環境をよく確認することをおすすめします。
東京ドーム
東京ドームにも車椅子席が用意されていますが、1塁側に8席分、3塁側に4席分と少なめの席数です。しかし価格は2,500円と安めに設定してあり、付添者2名まで同価格で入場できます。車椅子用(多目的)トイレは1塁側・3塁側に1つずつ設置してあります。
参照:東京ドーム 車いす席のご案内
先進的な取り組みをしている マツダスタジアム
先進的にバリアフリーが進められているのは広島東洋カープのホーム、マツダスタジアムです。野球観戦は内野・外野など6種類146席から好きな席を選ぶことができます。またパーティーデッキやテラスなどでも車椅子のまま観戦でき、席の種類が少ない他のスタジアムに比べ車椅子利用者が圧倒的に楽しめるスタジアムとなっています。国際パラリンピック委員会のガイドラインでは車椅子席は全体の0.5%としていますが、マツダスタジアムの車椅子席は基準を満たす席数が確保されています。ホスピタリティスタッフも常時待機していて、困った時は助けてもらえるのも魅力の一つ。
公共施設などで電動車椅子のシェアリングを進めるウィルでは、「広島カープモデルアームカバー」の発売を開始。スタイリッシュ・高性能な電動車椅子で、楽しい野球観戦をサポートしています。
参照:マツダスタジアム 車いすでのご観戦について
高校野球の応援に 甲子園球場
高校野球が開催される甲子園球場では、内野席・外野席・アルプス席にそれぞれ車椅子席があるので好きな席を選べるのが魅力です。さらに一般の席よりも低価格でチケットが購入できます。付添者は2名まで一緒に観戦できますが、付添者も車椅子席料金の入場料が必要です。甲子園球場には車椅子用も含め駐車場がないので、車で行く場合は周辺の駐車場をあらかじめ調べておく必要があります。
参照:日本高等学校野球連盟 >選手権大会>入場券
12人目の選手になろう! サッカー Jリーグ観戦
Jリーグの中でもサポーターが多い浦和レッズの試合は、車椅子席利用者1名につき、介護者1名が無料で入場できます。またチケット購入時に駐車券も発券され、優先的に駐車場が使えるので安心して現地(埼玉スタジアム)に行くことができます。車椅子利用者への対応が徹底されているため、車椅子席が完売することが多いようです。
ガンバ大阪のホームゲームでは、車椅子席は割引価格が適用される、また障害者手帳を提示するとキャッシュバックされるサービスなどを実施しています。
観戦したいチームのホームページで、どのようなサービスがあるか確認してみましょう。
味の素スタジアム
ラグビーやサッカー、駅伝の会場にもなる味の素スタジアムは、障害者や乳幼児連れの利用者も利用しやすい施設になっています。車椅子用のトイレは14カ所あり、専用の駐車場も22台分あります。駐車場からスタンドまでの通路も段差をなくすなどの工夫がされ、車椅子での移動もスムーズです。常設車椅子席52席、臨時車椅子席342席です。
なお、現在味の素スタジアムは、ラグビーワールドカップ2019™及び東京2020オリンピック大会に向けた大規模改修工事中で、順次車椅子席やエレベーターの増設、車椅子対応トイレの増設などを行い、今後席数等は変更が予定されています。
参照:味の素スタジアム 施設ガイド バリアフリー
日産スタジアム
日産スタジアムは国内最大の70,000人以上が収容できる競技場。そのうち車椅子席は147席、臨時車椅子席は485席です。もちろん車椅子用の駐車場・トイレも完備しています。
日産スタジアムをホームとする横浜マリノスの試合では、車椅子利用者でもメインSA、バックSB・SCなどから自由に選ぶことができ、付添者1名は無料です。またチケット購入時に、別途1200円を支払えば駐車場も確保できます。
参照:日産スタジアム >チケット>価格と席種
ラグビーワールドカップを観たい!
2019年に日本で開催されるラグビーW杯も全国12ヵ所の施設で開催され、車椅子で観戦が可能です。限定されたエリアからの観戦になってしまうため席を選ぶことはできませんが、価格は最も安いカテゴリーDが適用され、介助者1名分は無料のためリーズナブルに観戦できます。
また試合が行われる競技場がある岩手県釜石市では、障害者や高齢者が快適にラグビー観戦できるように歩道の幅や傾斜・段差の情報を盛り込んだバリアフリーマップの作成が進められています。
障害者自身が行うスポーツ そのメリットは?
先述の「障害者のスポーツ参加促進に関する調査研究」によると、肢体不自由の車椅子利用者がスポーツ・レクリエーションをやってよかったことは? の回答として、41.8%が「友人が増えた」、19.4%が「行動範囲が拡大した」と答えています。
身体が不自由でもスポーツを積極的に楽しむことで交流関係が広がり、前向きになれるようです。
障害者がスポーツ・レクリエーションを体験できる施設は?
それでは、障害者自身がスポーツを楽しみたい場合、どこへ行けば良いでしょうか?
この章では、障害者がスポーツ・レクリエーションを体験できる施設やその設備、今後の課題についてまとめました。
障害者がスポーツできる施設は? どんな設備がある?
障害者におすすめのスポーツ施設として、障害者向けのスポーツセンターがあります。例えば横浜ラポール では、グラウンド・体育館・プールを完備し、さまざまなスポーツ体験ができます。車椅子で楽しめるスポーツとしては、体育館やグラウンドでのバスケットボールやテニスなどの球技、水泳などです。
また、健康相談コーナーでは、専門のスタッフが体力や障害に応じて、個別のスポーツメニュー作成や、相談にのってくれます。
また東京都障害者総合スポーツセンター は障害を持つ人限定の施設で、体育館・トレーニング室など室内のスポーツ施設が充実しています。スポーツ教室やスポーツ相談なども行っているため、初めてスポーツ活動をする人にもおすすめです。
こういったスポーツセンターの他にも、地域のスポーツクラブや福祉施設などでもスポーツ・レクリエーションを実施しています。意外と知られていない施設もあるので、ネットや自治体の広報で居住地域の情報を集めてみましょう。
障害者がスポーツで施設を利用。今後の課題は?
障害者が地域のスポーツ施設を利用するにはさまざまな課題があります。
ハード面での課題としては、多目的トイレ・エレベーターなどの設置など、またソフト面での課題は、施設スタッフ・介助者の確保があげられます。
障害者が利用できるスポーツ施設はまだ多いとは言えません。だれでも安全に利用できるように、地域のスポーツ施設が障害者の利用に対応したバリアフリー設備を整えることが重要です。
もっとスポーツ・レクリエーションを楽しもう
車椅子のプレイヤーが活躍するスポーツはいろいろあり ますので、こちらの記事もご覧になってください。
バスケだけじゃない、車椅子スポーツ。サッカー、テニスも! 種類と見どころをご紹介
今後はラグビーW杯や東京オリンピック・パラリンピックの開催もあります。
積極的に観戦を楽しんでみてはいかがでしょう。
もし体を動かしたいなと思ったら、ぜひお住いの自治体や地域のスポーツセンターに、ご自身の状況を伝え、どういった施設を使えるか、確認してみてください。新しい楽しみが見つかるかもしれません。
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